「数字を見るのが苦手で…」
福祉事業の経営者から、よく聞く言葉です。
しかし、制度が複雑で加算要件も多いこの業界こそ、**数字を“読む力”**が経営を左右します。
児童発達支援や放課後等デイサービスの市場は年々拡大していますが、
同時に、報酬改定・人件費高騰・利用者獲得競争など、数字の裏にある「変化」を読み解けないと、事業を安定させることは難しくなっています。
この記事では、「数字に強い福祉経営者」になるための視点を、最新データと実例をもとに解説します。
感覚ではなく、データで未来を読む力を身につけましょう。
目次
数字が読めない経営の“怖さ”
福祉事業は、「人の支援」に重きを置く仕事です。
だからこそ、数字が苦手な経営者が多いのも事実。
しかし、数字を避けてしまうと、次のような問題が起こります。
- 利益が出ているのに、手元資金が減っている
- 職員を増やしたのに、なぜか赤字になっている
- 加算を取っているのに、収益が伸びない
これらはすべて、「数字の構造」を理解していないことが原因です。
数字を“管理”するのではなく、“経営判断の言語”として使えるかどうか。
それが、令和の福祉経営者に求められる力です。
データで見る――児発・放デイ市場の今
まず、児童発達支援・放課後等デイサービスの全体像を、厚生労働省と文部科学省の統計から見てみましょう。
- 事業所数:全国で約2万8,000か所(2024年)
- 利用児童数:約40万人(2012年の約10倍)
- 市場規模:年間約6,000億円を超えると推定
児童発達支援・放課後等デイサービスは、福祉業界の中でも成長率の高い分野です。
しかし、その一方で、報酬単価の見直しや指定基準の厳格化が進んでおり、
「成長産業でありながら淘汰も進む」という二極化が起きています。
ポイントは、「市場が拡大している=誰でも成功できる」ではない、ということ。
数字を読み解く力がなければ、拡大市場の中で埋もれてしまう可能性もあります。
利益構造を“見える化”する
児童発達支援・放課後等デイサービスの経営は、単純な売上では測れません。
特に、「加算」と「人件費」のバランスが、利益率を大きく左右します。
収益構造の基本
- 利用者数 × 単位数 × 報酬単価 = 売上
- 人件費 + 家賃 + 送迎費 + 事務経費 = コスト
- 売上 − コスト = 利益(≠手元資金)
この“単純な式”の中に、多くの落とし穴があります。
よくある見落とし
- 加算を取れていると思っていたが、要件未達で返還リスク
- 人件費率が上がり、実質赤字に
- 送迎車や燃料費のコスト上昇を見逃している
だからこそ、**「数字の定点観測」**が不可欠です。
毎月、損益計算書と実際の入金額を照らし合わせ、ズレを確認する。
その習慣が、経営の精度を上げます。
数字が語る“現場の課題”
数字は、経営だけでなく現場の課題も教えてくれます。
- 稼働率が80%を下回る → 利用定着に課題
- 職員の残業時間が増加 → 支援計画や配置の見直しが必要
- 加算が取れていない → 書類整備や研修の遅れ
数字は、現場を責めるためではなく、現場を支えるための鏡です。
「なぜこの数字になっているのか?」をチームで考えることで、支援の質も改善されます。
データ経営の第一歩:“見える化”から始める
数字を強くするには、まず「感覚経営」から脱却すること。
その第一歩が、“見える化”です。
見える化のポイント
- Excelではなく、クラウドで一元管理する
- 利用率・人件費率・利益率を毎月自動で可視化
- スタッフ全員が見られる「オープン経営」へ
見える化の目的は、監視ではなく「共有」。
数字をチーム全体で理解し、同じ方向に進むことができます。
例:EcoldLINKの活用
EcoldLINKでは、各事業所の稼働率・加算率・人件費率などが自動集計され、
月次の経営状況をリアルタイムで確認できます。
「感覚」で経営していた部分が、「データ」で裏づけされるようになり、
現場と経営がつながる。これが、データ経営の第一歩です。
福祉業界の未来を決める“3つの数字”
今後の児発・放デイ経営では、次の3つの数字を常に追うことが鍵になります。
- 稼働率(利用率)
- 人件費率
- 加算取得率
それぞれ、経営の健康状態を示す“血圧・体温・脈拍”のような存在です。
1. 稼働率
80%を切ると赤信号。
キャンセル対策や、学校・保護者との連携強化が必須です。
2. 人件費率
福祉業界では、売上の60〜70%が人件費に充てられます。
「採用の質」と「シフト管理」が利益を決める要素になります。
3. 加算取得率
単に「取る」ではなく、「取り続ける」ことが重要。
研修・記録・評価体制を仕組み化することで、安定収益に繋がります。
この3つを毎月モニタリングするだけで、経営は劇的に安定します。
“数字で見る支援”が生み出す新しい価値
データ経営というと、冷たいイメージを持たれるかもしれません。
しかし、数字は「人の努力を可視化するツール」です。
支援内容の改善、子どもの成長、職員の働きやすさ――
これらすべてをデータで裏づけることで、「感覚」から「根拠」へ進化できます。
数字で支援を語るメリット
- 行政や保護者への説明責任を果たせる
- 成果を可視化し、スタッフのモチベーションが上がる
- 他事業所との差別化につながる
「感覚で良い支援」から「数字で伝える良い支援」へ。
これが、これからの福祉経営のスタンダードです。
“数字に強い経営者”とは、冷たい人ではない
数字に強い経営者とは、決してドライな人ではありません。
むしろ、数字を通して人を守れる人のことです。
- 利益を出すことで、スタッフに適正な給与を支払える
- 数字を根拠に、保護者に安心を届けられる
- データを基に、持続可能な支援を実現できる
数字は、現場を守る“盾”であり、“武器”です。
経営者が数字を学ぶことは、最終的に子どもたちを守ることに繋がります。
終わりに ― データを“読む力”が未来をつくる
これからの福祉経営は、「理念×データ」で成り立ちます。
理念だけでは続かず、データだけでは心が動かない。
両方を融合させることが、次世代の経営者に求められています。
数字は嘘をつきません。
でも、数字をどう“解釈”するかで、未来は変わります。
理念を羅針盤に、データを地図に。
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