児童発達支援や放課後等デイサービスの現場では、近年「教育的アプローチ」という言葉を耳にすることが増えました。
かつては“福祉”としての役割が中心だった児発・放デイも、今や“教育の一翼を担う存在”として注目を集めています。
国の方針も「共生社会」「インクルーシブ教育」を掲げ、発達支援と教育の境界は急速に曖昧になりつつあります。
では、この変化の中で、私たち事業者や支援者はどのような未来を描くべきなのでしょうか。
この記事では、児童発達支援が“療育”から“教育”へと進化する背景と、これからの事業展開に求められる視点を、現場と経営の両側面から掘り下げていきます。
目次
「療育」という言葉が持つ原点
療育とは、医療と教育を組み合わせた日本独自の概念です。
発達の遅れや特性をもつ子どもたちに対し、生活能力や社会性を育てるための支援を行う――それが本来の意味でした。
昭和期には、主に「治療的アプローチ(リハビリ)」として用いられてきましたが、平成以降は「教育的支援(発達支援)」へと移行。
そして今、令和の時代には“学び”を軸とした「教育一体型支援」へと変化しています。
この流れの背景にあるのが、社会のニーズの多様化と、保護者の意識の変化です。
「できないことを支援する」から、「できるようになる力を育てる」へ――。
福祉から教育へ、支援のパラダイムが確実にシフトしています。
“教育型”児童発達支援が求められる理由
1. 学校とのギャップを埋めるため
小学校入学後、最初の壁になるのが“集団適応”。
「話を聞く」「順番を待つ」「感情をコントロールする」――これらの力が不足すると、学習以前に“学校生活そのもの”が難しくなります。
療育の現場では、これまで「日常生活スキル」中心の支援が多く行われてきました。
しかし、今求められているのは、学校での学びや社会生活につながる力の育成です。
つまり、児発・放デイの役割は「学校教育を支える教育機関」としての色合いを強めています。
2. 保護者が“学びの質”を求めている
近年、保護者のニーズは明確に変化しています。
「ただ楽しく過ごす場所」よりも、「子どもの発達に合わせた指導をしてほしい」「小学校につながる力をつけたい」といった要望が増えています。
実際に、Google検索や口コミでも“療育 教育”“就学準備 療育”というキーワードの検索数が急増。
保護者の中で「療育=教育的な支援」という意識が定着し始めていることが分かります。
3. 国の政策的後押し
文部科学省・厚生労働省が連携して進める「発達支援と教育の一体化」。
2023年以降、障害児通所支援の報酬改定やガイドラインでも、教育的要素の重要性が明記されるようになりました。
特に強調されているのは、
- アセスメントに基づく個別支援
- 社会的スキル・非認知能力の育成
- 就学移行に向けた教育機関連携
療育は“福祉の一領域”ではなく、社会教育の一部として認識され始めています。
“教育型”療育の特徴とは?
1. ゴールが「自立・社会参加」
療育が目指すのは「困りごとの改善」、教育が目指すのは「生きる力の育成」。
教育型療育では、この2つを統合し、「できない」を減らす支援から「できる」を増やす支援へと転換します。
- 感情のコントロールを学ぶSELプログラム
- 集団活動での“聞く力・待つ力”のトレーニング
- ビジョントレーニングや感覚統合による身体づくり
- 言語・認知課題による思考力の発達支援
これらはすべて、将来の「社会的自立」へとつながる教育です。
2. 支援者が“指導者”としての専門性を持つ
従来の療育では「寄り添い」「見守り」が重視されていましたが、教育型療育では「意図をもって教える」ことが求められます。
子どもを理解する力(アセスメント)と、成長を設計する力(プログラムデザイン)が不可欠です。
言い換えれば、福祉と教育のハイブリッドな人材――「発達支援の教師」のような存在です。
3. 環境設定そのものが教育になる
整理整頓された空間、見通しをもてる掲示、静と動の切り替え――。
こうした“環境デザイン”の工夫そのものが教育です。
エコルドでも、「学びやすい空間」「安心できる導線」「集中できる座席配置」などを重視し、環境そのものを教材として設計しています。
“教育型療育”がもたらす3つのメリット
① 利用者の満足度が高まる
保護者が「通わせて良かった」と感じるのは、目に見える成長がある時です。
教育的視点を取り入れることで、行動変化・言語発達・対人スキルなど、成果を可視化しやすくなります。
② スタッフのモチベーションが上がる
“教える”という役割が明確になることで、スタッフの専門性が高まり、仕事への誇りも強くなります。
特に、教育・保育分野出身の職員にとっては、自分のスキルを活かせる場になります。
③ 行政・学校からの信頼が得られる
教育的アプローチを明確に持つ事業所は、学校や教育委員会との連携がスムーズになります。
「この子の成長を一緒に考えてくれる事業所」として認知され、地域内での信頼が高まります。
“療育から教育へ”の転換で注意すべき点
1. “教える”が“押し付け”にならないように
教育的支援は、子どもの発達段階を丁寧に見極めることが前提です。
発達段階を無視した過剰なトレーニングは、子どもを追い詰め、逆効果になることもあります。
2. 現場職員の研修体制
教育的支援を導入するためには、職員が「教える技術」を学ぶ必要があります。
教員免許や保育士資格があっても、発達支援の視点とは異なる部分も多いため、継続的な研修が必須です。
3. “教育”と“療育”のバランス
支援は「教える」だけでなく、「安心させる」「受け止める」ことが基本です。
教育型に偏りすぎず、**“あたたかさと専門性の両立”**を目指すことが重要です。
今後の市場展望――“教育一体型福祉”の拡大
今後10年、児童発達支援の市場は“教育化”によって再構築されていくと考えられます。
厚生労働省のデータによると、発達障害児の診断件数は10年で約2倍。
特別支援教育に在籍する児童数も年々増加しており、2024年度は全国で約58万人に達しました。
さらに、こども家庭庁の方針として「発達支援×教育の連携推進」が明記されており、
福祉と教育の統合が国策レベルで進められています。
この動きは、単なる言葉の変化ではなく、教育産業の中に“発達支援”が正式に位置づけられる転換点です。
英会話・プログラミング・学習塾のように、療育も“教育市場の一部”として広がっていく未来が見えています。
エコルドの取り組み――「教育×福祉」の新モデル
療育センターエコルドでは、「二次障害にさせない社会をつくる」という理念のもと、教育的アプローチを全面に取り入れています。
- ビジョントレーニング・言語認知課題などを体系化した教育プログラム
- 集団活動にSEL(社会的情動学習)を導入
- ICTを活用した個別支援計画と成長データの可視化
- 小学校・園との連携による一貫支援
また、フランチャイズ加盟店に対しても「教育型療育プログラム」と「職員研修マニュアル」を提供し、
現場で即実践できる仕組みを整えています。
加盟者からは、
「“教育的支援”の明確化で、保護者の信頼が高まった」
「採用の時点で“理念に共感するスタッフ”が増えた」
といった声が寄せられています。
終わりに――“教育化”は進化であり、本質回帰
「療育から教育へ」という変化は、“福祉が教育を取り込む”というよりも、
本来の「子どもの発達を支える」という原点に立ち返る動きです。
私たちが支援しているのは、“できない子を治す”ことではなく、
“その子が自分らしく生きていく力を育てる”こと。
そのために必要なのは、“教えること”と“支えること”の両立です。
児童発達支援の未来は、もはや“療育”だけでは語れません。
教育的視点を持った新しい福祉の形が、これからの社会をつくっていくのです。
療育センターエコルドでは、教育×福祉の両立を実現する「教育型療育モデル」を全国に広げています。
“支援の質”を高めたい、理念ある福祉経営をしたい――そう考える方は、ぜひ一度ご相談ください。











