「理念なんてきれいごとだ」
そう感じる経営者も少なくありません。
しかし、現場を見渡してみると、理念が浸透している事業所ほどスタッフの定着率が高く、保護者からの信頼も厚いことがわかります。
逆に、理念が形だけになっている組織は、いくら仕組みを整えても、どこかで歪みが生まれます。
児童発達支援や放課後等デイサービスは、“人の想い”で動く事業です。
だからこそ、経営者の想いが現場に届いていない組織は、どんなマニュアルを導入しても長続きしません。
この記事では、「理念を現場に浸透させ、行動に変える経営」=理念経営の考え方を、
エコルド本部の支援事例や実際の現場経験をもとに解説します。
目次
理念は“掲げる”ものではなく“使う”もの
多くの事業所では、壁に「理念」や「行動指針」が掲げられています。
しかし、スタッフに聞くと「言葉は知ってるけど、何のためにあるかは分からない」と返ってくることも多いのが現実です。
それはつまり、“理念が飾りになっている状態”。
理念は、組織の「判断基準」として使われてこそ意味があるのです。
たとえば、
- 保護者からの要望にどう対応するか
- 支援方針で意見が割れた時、どちらを選ぶか
- 新しい加算や業務を取り入れるかどうか
このすべての場面で、“理念に照らしてどう判断するか”が問われます。
理念が現場で“使われている”組織は、ブレがありません。
逆に、“使われていない”組織は、リーダーが変わるたびに方針が揺れ、スタッフも迷子になります。
“理念が伝わらない”のはなぜか?
理念を掲げても伝わらないのには、いくつかの原因があります。
1. 抽象的すぎて、現場に落とせていない
「子どもを真ん中に」「地域に貢献する」
どれも素晴らしい言葉ですが、現場スタッフには具体的なイメージが湧きにくいのです。
理念は“翻訳”して伝える必要があります。
たとえば、
「子どもを真ん中に」という理念なら、
- “活動中に子どもの意見を1回は聞く”
- “保護者対応で子どもの視点を代弁する”
というように、日常の行動レベルに落とし込むことが大切です。
2. 経営者が“伝えたつもり”になっている
経営者が朝礼で語り、会議で繰り返し話している――
それでも理念が浸透しないのは、「伝えた」=「伝わった」ではないからです。
スタッフの理解度は、立場や経験によって異なります。
同じ言葉を聞いても、受け取り方は人それぞれ。
だからこそ、理念は“一方向の発信”ではなく、“対話”によって育てていく必要があります。
3. 現場リーダーが理念を代弁できていない
理念はトップダウンだけでは機能しません。
現場の管理者やリーダーが“自分の言葉で理念を語れるか”が鍵です。
もし、リーダー自身が理念を理解していなければ、現場の意思決定はその都度バラバラになります。
つまり、理念の浸透には「ミドル層の育成」が欠かせないのです。
理念経営の3ステップ
理念を“現場で生きる言葉”にするには、段階的な仕組みが必要です。
ここでは、エコルドが実際に行っている理念浸透のプロセスを紹介します。
ステップ1:理念を“翻訳”する
理念は、現場スタッフが“自分の仕事にどう関係するか”を理解できる言葉に置き換えます。
たとえば、
理念:「二次障害にさせない社会をつくる」
これを現場でどう行動に落とすか?
- 子どもの失敗を叱るのではなく、原因を一緒に考える
- 苦手なことを“できる方法”で支援する
- 他のスタッフと情報を共有し、孤立させない
こうした“翻訳”をチームで行うことで、理念が実感を伴って理解されるようになります。
ステップ2:理念を“仕組みに埋め込む”
理念を語るだけでなく、評価制度・研修・会議など、日常の仕組みに反映させることが大切です。
- 面談シートに「理念に基づく行動」の項目を入れる
- 朝礼で“理念に沿ったエピソード”を1人が共有する
- 新人研修で理念の成り立ちを学ぶセッションを設ける
理念は、“日常の中で触れる頻度”が多いほど浸透するのです。
ステップ3:理念を“共感の物語”にする
理念は、単なる目標ではなく、「なぜこの事業をやるのか」という物語です。
経営者自身が原点や想いを語ることで、スタッフは“働く理由”を見つけます。
- 「なぜ児童発達支援に関わろうと思ったのか」
- 「どんな子どもの笑顔を見た時にやりがいを感じたのか」
数字ではなく“人の言葉”が理念を動かす――これが理念経営の本質です。
理念経営がもたらす3つの効果
1. 離職率の低下
理念が共有されると、スタッフは“自分の仕事の意味”を見失いません。
「ここで働く理由」が明確になることで、モチベーションが保たれ、離職率が下がります。
2. 保護者からの信頼が高まる
理念が浸透している事業所では、保護者対応にも一貫性が生まれます。
「どの職員に話しても同じ姿勢で応えてくれる」――その安定感が信頼につながります。
3. 経営判断がブレない
加算制度や報酬改定など、制度が変わっても“理念”があれば迷いません。
理念は、短期的な利益よりも長期的な価値を優先する“羅針盤”です。
理念が現場で“形になる”瞬間
理念は、言葉としてではなく、**行動として現れた瞬間に初めて“生きる”**ものになります。
たとえば、次のような場面です。
- 活動中、子どもが失敗して泣いたときに、職員が「もう一回やってみよう!」と励ます
- スタッフが互いに「ありがとう」を自然に言い合う
- 保護者との面談で「できるようになったところ」を真っ先に伝える
これらはすべて、理念が現場に根づいている証拠です。
理念は大きな旗ではなく、小さな行動の積み重ねとして現れるのです。
理念を「経営の軸」にするための仕組み
理念を“語る経営”から“使う経営”へ変えるには、次のような仕組み化が必要です。
- 理念を数値目標と連動させる
例:「子どもの自己肯定感向上」→保護者アンケートでの満足度指標に反映。 - 理念を人事制度に組み込む
理念を体現している行動を評価に直結させることで、行動変容が促されます。 - 理念に基づく採用・育成
採用面接の段階で理念を共有し、共感できる人材を採る。
入職後も、理念をベースにした研修・フィードバックを行う。 - 経営者自身が“語り続ける”
理念は一度伝えれば終わりではありません。
経営者が節目ごとに語り直すことで、組織の方向性が再確認されます。
エコルドが実践する“理念経営”
療育センターエコルドでは、創業当初から「二次障害にさせない社会をつくる」という理念をすべての中心に置いています。
この理念は、全国の加盟店にも共通しており、開業研修・動画マニュアル・定例ミーティングなど、あらゆる場面に組み込まれています。
- 理念をもとにしたスタッフ評価制度
- 現場での行動指針を可視化したマニュアル
- 理念共有を目的とした本部交流会・オンライン勉強会
- 加盟店同士が理念を語り合うSlackコミュニティ
理念を「掲げるだけ」で終わらせず、「共有し、磨き、行動に変える」――。
それが、エコルドの理念経営です。
加盟者からは、
「理念を中心に据えたことで、スタッフの方向性がそろった」
「保護者対応で悩んだ時も、理念を思い出せば判断に迷わない」
といった声が多く寄せられています。
終わりに
理念は、経営者の“想い”を組織の力に変えるエンジンです。
理念が伝わる組織は強く、理念が使われる現場はしなやかです。
制度が変わり、加算が改定されても、理念がある限り、揺るがない軸が残ります。
“二次障害にさせない社会をつくる”――この言葉のもとに、
エコルドは全国で、理念経営を実践する仲間を増やしています。
経営に悩んだときこそ、理念に立ち返る。
そして、その理念を“言葉”ではなく“仕組み”として残していく。
それが、持続可能な福祉経営の第一歩です。
あなたの事業に理念の風を吹かせたい方は、ぜひ一度ご相談ください。











