スタッフの給与体系・就業規則が不明確な施設の『不満・離職』

はじめに

放課後等デイサービスや児童発達支援施設の経営者が気付きにくい離職の原因があります。

それが「スタッフの給与体系や就業規則が不明確」という問題です。

スタッフは毎月いくらの給与をもらえるのか分からない。昇給があるのかないのか分からない。休日はいくつなのか、残業代はどのように計算されるのか不明確なままです。

このような状況では、スタッフは「この施設で働き続ける意味があるのか」という疑問を感じ始めます。

最初は新規スタッフが離職しますが、やがて経験豊富なベテランスタッフまでが「別の施設に転職したい」と考え始めるのです。

経営者が気付いた時には、施設の要となるスタッフが離職してしまい、取り返しのつかない状況になっていることもあります。

実は、給与体系と就業規則を明確にするだけで、スタッフの満足度は劇的に向上し、離職を防ぐことができるのです。

本記事では給与体系・就業規則が不明確な施設で何が起きるのか、明確化することでどのような改善が実現されるのかについて、具体的に解説します。

給与体系・就業規則が不明確な施設で生じる現象

スタッフが自分の給与を理解していない

給与計算方法が複雑で、スタッフが「毎月いくら給与をもらえるのか」を正確に理解していない状態です。

基本給は分かるが、手当の計算方法が不明確。残業代の計算方法も曖昧。

その結果、スタッフは毎月の給与額に一貫性がなく、不信感を抱くのです。

昇給の基準が分からない

昇給があるのかないのか、どのような基準で昇給が決まるのか、スタッフに説明されていません。

その結果、スタッフは「このまま給与が変わらないのか」という不安を感じ始めるのです。

就業規則が周知されていない

休日の数、残業時間、各種手当(住宅手当、子ども手当など)、有給休暇の取得方法など、基本的な就業ルールがスタッフに周知されていません。

スタッフは「自分たちの権利が何なのか」を理解できないまま業務にあたるのです。

スタッフの不安と不満が蓄積

毎月の給与が不透明で、昇給の見通しが立たず、就業ルールが曖昧という状態が続くと、スタッフの不安と不満が蓄積します。

「この施設で働き続けることは本当に正しいのか」という根本的な疑問が生じるのです。

離職が相次ぐ

不安と不満が蓄積したスタッフから、順次離職が始まります。

最初は新規スタッフですが、やがて経験豊富なベテランスタッフまでが転職を決断し始めるのです。

実際に生じた事例

事例1:給与体系・就業規則が不明確で、離職が相次いだ施設

状況

児童発達支援施設A。スタッフ10名、利用者30名の施設。

施設長は「給与体系や就業規則は開業時に作ったから大丈夫」と考えていました。

しかし、その内容をスタッフに詳しく説明したことはなく、就業規則も事務所の引き出しにしまったままでした。

スタッフが給与を理解していない

スタッフAは毎月の給与額が月によって異なることに気付きました。

あるスタッフに「なぜ先月は25万円で今月は23万円なのか」と聞いてみたのですが、スタッフB は「分からない。勝手に変わっている」と答えました。

実は、手当の計算方法が不透明で、スタッフ本人も経営者も毎月の給与額を把握していない状態でした。

昇給について質問される

新規スタッフが施設長に「この施設では昇給があるのか」と質問しました。

施設長は曖昧に「成績が良ければある」と答えましたが、その「成績」とは何なのか、いつ評価されるのかは説明されませんでした。

スタッフは「昇給の基準が分からない」という不安を感じ始めたのです。

就業規則に関するトラブル

スタッフが「有給休暇を取りたいのですが、いつから取得できるのか」と質問しました。

施設長は就業規則を確認しようとしましたが、引き出しから出した書類をいくつか見直しても、有給休暇の規定がどこに書いてあるのか分かりませんでした。

スタッフは不信感を持ち始めました。

スタッフの不満が蓄積

複数のスタッフから「給与が低い割に仕事量が多い」「昇給の見通しがない」というつぶやきが聞こえるようになりました。

スタッフたちは「この施設は自分たちの処遇を大切にしていないのではないか」と感じ始めたのです。

新規スタッフの早期離職

新規スタッフAは採用後3ヶ月で「別の施設に転職したい」と申し出ました。

理由は「給与の見通しが立たない」「この施設に将来がないと感じた」というものでした。

新規スタッフBも同様に「もっと給与が明確な施設に行きたい」と離職しました。

ベテランスタッフの離職

施設開設時からいるスタッフCが「転職を決めた」と言い出しました。

理由は「5年働いているのに給与がほとんど変わっていない」「他の施設では3年で昇給しているらしい」というものです。

スタッフCは施設に大きな貢献をしていたため、その離職は施設に大きなダメージになりました。

採用と離職の悪循環

スタッフが次々と離職するため、施設は常に採用活動に追われることになりました。

採用しても「給与が分からない」という理由で辞めるスタッフもいて、悪循環に陥ったのです。

経営への影響

スタッフの頻繁な交代により、支援品質が低下しました。

新規利用者申し込みも減少し、月間売上が70万円から50万円に低下しました。

経営者は「スタッフが辞める理由」を真剣に考える必要に迫られたのです。

教訓

給与体系・就業規則が不明確だと、スタッフの不満が蓄積し、離職が相次ぐのです。

事例2:給与体系・就業規則を明確化し、スタッフ定着率が向上した施設

状況

放課後等デイサービスB。施設長が「スタッフの離職が多い」という問題に直面し、その原因を深く検討することにしました。

複数のスタッフに面談を実施した結果、「給与が不透明」「昇給の基準が分からない」という声が相次いだのです。

施策1:給与体系の透明化

施設長は、給与計算システムを見直し、基本給、各種手当、残業代の計算方法を明確に整理しました。

給与内訳:基本給20万円、主任手当5000円、処遇改善加算3万円、通勤手当1万円、残業代(時給1500円×残業時間)

この内訳を書面にまとめ、各スタッフに配布しました。

その結果、スタッフは「毎月の給与がどのように計算されているのか」を理解できるようになったのです。

施策2:昇給基準の明確化

昇給制度を整備し、以下のような基準を明確に定めました。

昇給基準:

  • 勤続1年で年1回、月2000円の昇給
  • 資格取得(児童発達支援管理責任者など)で特別昇給月1000円
  • 特に優れた支援成果がある場合、年間で最大月3000円の特別昇給

この基準を全スタッフに説明し、スタッフが「自分たちがどのような条件で昇給するのか」を理解できるようにしました。

施策3:就業規則の整備と周知

就業規則を整理し、以下の項目を明確に定めました。

内容:勤務時間、休日(年間105日)、有給休暇(初年度10日、2年目以降11~20日)、育児休暇、介護休暇、各種手当(住宅手当、子ども手当)

この就業規則を書面で全スタッフに配布し、読み合わせ会を開催することで、全スタッフが内容を理解するようにしました。

施策4:定期的な給与面談

年1回、各スタッフと給与面談を実施することにしました。

面談内容:現在の給与、昇給の見通し、キャリアパス、待遇改善の要望

この面談を通じて、スタッフと施設長がコミュニケーションを取り、スタッフの処遇に関する悩みや要望を把握できるようにしました。

施策5:処遇改善加算の説明

政府の「処遇改善加算」という制度があることを、スタッフに説明しました。

この加算により、スタッフの給与が加算されていることを理解してもらいました。

その結果、スタッフは「施設が努力して自分たちの給与を上げようとしている」と認識するようになったのです。

結果

給与体系・就業規則の明確化により、以下のような効果が実現されました。

スタッフの不安が軽減

給与体系が明確になり、昇給基準が分かり、就業規則が理解できるようになったため、スタッフの不安が大幅に軽減されました。

スタッフAは「毎月の給与が明確だから、家計管理も楽になった」とコメントしました。

スタッフの満足度向上

昇給基準が明確になったことで、スタッフは「3年働けば給与が月6000円上がる」という見通しを持つようになり、モチベーションが向上しました。

スタッフの定着率向上

新規スタッフの3ヶ月以内離職率が70%から15%に低下しました。

理由は「給与や昇給の見通しが立つようになったから」というものでした。

ベテランスタッフの定着

勤続年数の長いスタッフも「昇給基準が明確だから、このまま施設で働き続けよう」という気持ちになり、定着率が向上しました。

採用難が解決

給与体系が明確な施設として評判が立つようになり、新規採用面接の際に「給与について不安がない」というコメントが増えました。

採用難が解決され、質の高い人材の確保が容易になりました。

支援品質の向上

スタッフが定着し、ベテランスタッフが減らなくなったため、支援品質が安定しました。

月間売上の回復

スタッフの定着により支援品質が向上し、利用者数が30名に増加、月間売上が月間70万円に回復しました。

給与体系・就業規則が不明確な施設で起きる3つの悪循環

悪循環1:給与が不透明→スタッフの不安蓄積→離職

給与体系が不明確だと、スタッフは「毎月いくら給与をもらえるのか」という基本的な不安を抱えます。

その結果、スタッフは離職を決断するのです。

悪循環2:スタッフ離職→採用に追われる→教育不十分

スタッフが頻繁に離職するため、施設は常に採用活動に追われます。

その結果、新規スタッフへの教育が不十分になり、さらに早期離職が増えるのです。

悪循環3:支援品質低下→利用者満足度低下→新規申し込み減少

スタッフが頻繁に交代するため、支援品質が低下します。

その結果、利用者と保護者の満足度が低下し、新規利用者申し込みが減少するのです。

給与体系・就業規則の重要な5つの要素

要素1:給与計算方法の明確化

基本給、各種手当、残業代の計算方法を明確に定め、スタッフに説明します。

スタッフが「毎月いくら給与をもらえるのか」を理解できる状態にします。

要素2:昇給基準の設定と周知

昇給があるのか、昇給基準は何か、いつ昇給が実施されるのかを明確に定め、全スタッフに周知します。

要素3:就業規則の整備と周知

勤務時間、休日、有給休暇、各種手当、育児休暇など、基本的な就業ルールを明確に定め、全スタッフに周知します。

要素4:定期的な給与面談

年1回以上、各スタッフと給与面談を実施し、スタッフの処遇に関する悩みや要望を把握します。

要素5:処遇改善制度の説明

政府の処遇改善加算などの制度を理解し、スタッフに説明することで、スタッフが「施設が自分たちの給与向上に取り組んでいる」と認識するようにします。

給与体系・就業規則の実装ステップ

ステップ1:現在の給与体系の整理(1~2週間)

現在、スタッフにどのような給与を支払っているのか、その計算方法は何かを整理します。

ステップ2:給与計算方法の見直し(1~2週間)

給与計算方法が複雑すぎないか、スタッフが理解できる形になっているかを確認し、必要に応じて見直します。

ステップ3:昇給制度の設計(1~2週間)

昇給制度を設計し、基準を明確に定めます。

ステップ4:就業規則の整備(2~3週間)

勤務時間、休日、有給休暇、各種手当など、基本的な就業ルールを明確に定め、文書化します。

必要に応じて弁護士や社会保険労務士に相談することをお勧めします。

ステップ5:給与・就業規則の書面作成(1~2週間)

給与体系と昇給基準、就業規則を書面にまとめ、わかりやすい形で全スタッフに配布します。

ステップ6:スタッフへの説明会開催(1~2週間)

全スタッフを集めて、給与体系、昇給基準、就業規則について説明します。

スタッフからの質問に丁寧に答えることが重要です。

ステップ7:定期的な給与面談の開始(継続的)

年1回以上、各スタッフと給与面談を実施し、スタッフの処遇に関する悩みや要望を把握します。

給与体系・就業規則のチェックリスト

貴施設の給与体系・就業規則が適切か、以下のチェックリストで確認してみてください。

給与体系について

  • □ 給与計算方法を文書化しているか
  • □ 基本給、手当、残業代の計算方法が明確か
  • □ スタッフが毎月の給与額を正確に把握しているか

昇給制度について

  • □ 昇給制度が存在するか
  • □ 昇給基準が明確に定められているか
  • □ 全スタッフが昇給基準を理解しているか

就業規則について

  • □ 就業規則を文書化しているか
  • □ 勤務時間が明確か
  • □ 休日数が明確か(年間120日以上が望ましい)
  • □ 有給休暇の取得方法が明確か
  • □ 各種手当(住宅手当、子ども手当など)が定められているか

スタッフへの周知について

  • □ 給与体系を書面で配布しているか
  • □ 就業規則を書面で配布しているか
  • □ スタッフ説明会を開催しているか
  • □ スタッフからの質問に答える体制があるか

給与面談について

  • □ 定期的に給与面談を実施しているか
  • □ 面談でスタッフの処遇に関する悩みや要望を聞いているか

スタッフの満足度について

  • □ スタッフが給与に納得しているか
  • □ 新規スタッフの3ヶ月以内離職率は20%以下か
  • □ スタッフの総離職率は10%以下か

これらのチェック項目で「いいえ」が5個以上の場合、給与体系・就業規則の整備が強く推奨されます。

給与体系・就業規則整備における注意点

注意点1:給与計算は「定期的な見直し」が必要

給与体系を一度作ったら終わりではなく、毎年見直すことが重要です。

スタッフの生活環境の変化、業界の給与相場の変化などに対応する必要があります。

注意点2:昇給制度は「実現可能」である必要

昇給基準を定めても、実際に昇給できないほど経営が逼迫していては意味がありません。

経営状況を踏まえた、実現可能な昇給制度を設計することが重要です。

注意点3:就業規則は「法令遵守」が基本

就業規則は労働基準法や児童福祉法など、関連法令を守った内容である必要があります。

必要に応じて弁護士や社会保険労務士に相談することをお勧めします。

注意点4:給与面談は「スタッフの声を聞く機会」

給与面談は「一方的に説明する」ものではなく、「スタッフの声を聞く」という姿勢が重要です。

スタッフの要望や懸念に耳を傾け、可能な範囲で対応することが、スタッフの信頼につながるのです。

給与体系・就業規則の明確化が、スタッフを定着させる

ここまでご説明してきた通り、給与体系・就業規則の明確化は、スタッフの定着率と満足度に直結する極めて重要な課題なのです。

給与体系・就業規則を明確化することで、以下のような効果が期待できます。

  • スタッフの不安が軽減される
  • スタッフの満足度が向上する
  • 新規スタッフの定着率が向上する
  • ベテランスタッフの離職が減少する
  • 採用難が解決される
  • 支援品質が向上する
  • 月間売上が増加する

しかし実際には、多くの施設は給与体系が不透明で、昇給制度が曖昧で、就業規則がスタッフに周知されていない状況に置かれています。

その理由は、以下のような点にあります。

  • 給与体系の整備が手間だと考えている
  • 昇給制度を設計する知識がない
  • 就業規則について理解していない
  • 「スタッフが辞める理由が給与にあるとは思わない」という誤解

カスタムメイドエコルドのコンサルティングでは、給与体系・就業規則の整備に特化した支援を行っています。

  • 給与計算方法の見直し
  • 昇給制度の設計
  • 就業規則の整備
  • スタッフへの説明会実施
  • 定期的な給与面談の仕組み化
  • 処遇改善制度の活用支援

給与体系・就業規則を明確化することで、スタッフが定着し、支援品質が向上し、最終的には「月間利用者数の増加」「年間利益の向上」につながります。

貴施設の給与体系・就業規則について、専門家の視点から整備してみませんか。必要に応じて弁護士や社会保険労務士との連携も可能です。

無料相談からお気軽にお問い合わせください。

→ 給与体系・就業規則の整備について相談する https://custom.d2i.jp/contact.html


カスタムメイドエコルドは、放課後等デイサービス・児童発達支援施設の経営課題に特化したコンサルティングサービスです。給与体系・就業規則の整備からスタッフ定着促進まで、施設の『安定した経営基盤』をトータルでサポートいたします。

nozomi nakayama

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療育コンサル中山です。 全国にエコルドのフランチャイズと業務改善クラウドシステム「EcoldLINK」を広げるため、さまざまな情報発信をしています!